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クラウドファンディングと知的財産権(2)

前回も少し述べたように、クラウドファンディングによって目標の資金を集めることができても、知的財産権の問題でプロジェクトが立ち行かなくなる場合もあります。

このようなリスクは主に以下の二つに大別されます。

(1) 公開したアイデアの第三者による摸倣

(2) 知的財産権の侵害

今回は過去の事例を交えながら、これらのリスクについて観ていきましょう。


(1) 公開したアイデアの第三者による摸倣

クラウドファンディングで公開したアイデアが第三者に模倣されてしまった事例としては、Lunatik社のウォッチキットがあります。

このウォッチキットは、かつてアップルが販売していたデジタルオーディオプレーヤー「iPod nano」を腕時計として装着できるようにする腕時計型のバンドです。

iPod nanoには時計表示機能もあったため、それを腕時計として利用してしまおうというアイデアですね。

詳しくは以下の商品説明動画とアマゾンの商品サイトを見てください。

Lunatik社のウォッチキットの商品説明動画

Lunatik社のウォッチキットのアマゾン商品サイト

Lunatik社は米国Kickstarter社が運営するクラウドファンディングで、このウォッチキットのアイデアを公開し、その商品化のための資金支援を募りました。

結果は大成功。Lunatik社はわずか30日間で100万ドルの資金調達に成功しています。世間に与えたインパクトの大きさが良く分かります。

しかし、Lunatik社はこのアイデアについて特許権や意匠権などの知的財産権を何ら取得していませんでした。

つまり、まったく無防備な状態でアイデアを全世界に公開してしまったわけです。

その結果、あっという間に低価格の模倣品が世界中で発売され、Lunatikのウォッチキットの売り上げは当初の予想を大幅に下回るものとなってしまいました。

上述のアマゾンのサイトを観ても、模倣品がLunatik社の製品よりも1000円近く安く売られているのが分かりますね。

確かに、特許権や意匠権を取得するためには新規性や進歩性・創作性といった要件を満たす必要があるため、どのようなポイントで権利取得が可能で、それによってどのような模倣を排除できるのかという問題もあります。

しかし、アイデアを公開する前に知的財産権による模倣防止策を検討しておけば、このような模倣を相当程度回避できたかもしれません。

参考:What No one Tells You About Crowdfunding and Intellectual Property


(2) 知的財産権の侵害

これは、公開したアイデアの商品が誰か他人の知的財産権を侵害するものだったという問題です。

このような事例にはFormlabs社の3Dプリンターがあります。

Formlabs社はKickstarter社のクラウドファンディングによって300万ドルの資金を調達。それを元手に3Dプリンターの生産・販売を開始しました。

ところが、この製品にクレームをつける者が現れます。3Dプリンターの包括的な製品とサービスを提供する3D Systems社です。

3D Systems社は、Formlabs社の3Dプリンターが3D Systems社の特許権を侵害するとして特許権侵害訴訟を提起。

Formlabs社は判決が確定するまでの2年間、製品の販売を行うことができず、大きな損害を被ることになりました。


商標権で問題になったのはSunstone Games社のケース。

Sunstone Games社は「Kaiju Combat」というタイトルのビデオゲームについて、Kickstarter社のクラウドファンディングで資金調達を開始しました。

ところがこのゲームタイトルはWizards of the Coast社が商標権を持つ商標に類似。

Wizards of the Coast社はSunstone Games社に対し、商標権を侵害するとして「Kaiju Combat」の使用をやめるよう法的手続きを行います。

結局、Sunstone Games社はWizards of the Coast社との和解交渉に入りましたが、それまでの間、クラウドファンディングの活動自体を中断せざるを得なくなってしまいました。

その後、クラウドファンディング活動は再開されたものの、Sunstone Games社はゲームタイトルの変更を余儀なくされ、訴訟対応や和解交渉に多額の資金を費やす結果となってしまいました。

参考:Kickstarter crowdfunding now available in Canada – IP issues likely to follow across the border


著作権問題でクラウドファンディングの活動が中止となった事例もあります。

対象は「スペース・インベーダ・チェスセット」。

こでは80年代にブームとなったスペース・インベーダのキャラクタを透明なチェスの駒にした商品です。

販売間違いないとも言われていたようですが、プロジェクト自体が取りやめとなってしまいました。その理由は公開されていませんが、著作権問題が原因だったのではないかと推測されます。

参考:Space Invader Chess Set Brings Your Favorite 8-Bit Aliens To Life


海外での事例が多いですが、近年のクラウドファンディング市場の成長に応じ、今後日本でも同様な問題が発生することが予想されます。

次回はこのようなクラウドファンディングでの知財問題を避けるための対策について述べてみます。


今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。

弁理士 中村幸雄


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