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発表前にネタバレすることなく商標登録出願を行う方法

GoogleやAppleの新商品の名称は、新商品の発表イベントまで非公開とされ、そこでのプレゼンテーションによって全世界に公開されます。

こういうイベントは、どんな商品が発表されるのかが秘密なだけにワクワクしますね。

このように新商品を発表する企業は、新商品の名称を商標登録出願し、商標権を取得することが多いと思います。

名称だけを模倣した粗悪品が第三者から販売されたり、発表された名称の商標権を第三者に取られてしまったり、といった不利益を避けるためですね。

日本の商標法では、複数の者によって類似範囲の商標登録出願が行われた場合、最先の出願人にのみに商標登録が認められます(先願主義)。要は早い者勝ち。

そのため、新商品を発表する側としては、できるだけ早い時期に新商品の商標登録出願を済ませておきたいところです。

しかし、日本の特許庁に商標登録出願を行うと、それから2週間後ぐらいに出願内容が出願公開されてしまいます(商標法12条の2)。

つまり、あまりに早く出願をしてしまうと、発表イベント前に新商品の名称が公開され、いわゆるネタバレしてしまいます。

新商品の名称はできるだけ早く出願したいけれども、早すぎると発表イベント前にネタバレしてしまう、そんなジレンマですね。

GoogleやAppleは、このジレンマをパリ条約の「優先権」という制度を用いて乗り越えています。

 

1.パリ条約の優先権

パリ条約の優先権とは、パリ条約の同盟国(第一国)で出願した者が、その出願内容について他の同盟国(第二国)に出願した場合に、第一国の出願日(優先日)に出願されたのと同様の取扱いを受ける権利のことです(パリ条約4条)。

日本もパリ条約の同盟国ですので、この優先権を利用して商標登録出願を行うことができ、優先権を利用するためには、第一国の出願から6ヶ月以内に日本(第二国)に出願を行う必要があります。

例えば、日本以外の第一国で商標登録出願を行い、それから6か月以内に優先権を主張して日本(第二国)に商標登録出願を行うことができ、このような出願はあたかも第一国の出願日に出願されていたかのように扱われます。

つまり、早い者勝ちのルールにおいて有利な立場に立てるわけです。


2.出願公開制度が存在しない国

商標権などの知的財産権は属地主義を原則とし、原則、その国ごとに別個の商標法が適用されます。

前述のように、日本の商標法の下で日本特許庁に商標登録出願を行った場合、その出願内容は出願公開されます。一方で、商標登録出願を行っても内容が出願公開されない国も存在します。

例えば、トンガ王国で商標登録出願を行っても、その出願公開は行われません。

そのため、新商品の発表イベントの前にトンガ王国で商標登録出願を行っても、その出願によって新商品がネタバレすることはありません。

 

3.発表イベント前にネタバレすることなく商標登録出願を行う方法

出願公開制度が存在しない国がパリ条約の同盟国であれば、その国を第一国として早い時期に商標登録出願をしておき、その後に新商品の発表イベントを開催し、新商品の名称の発表後にパリ条約の優先権を主張して日本に出願することで前述のジレンマを解消できます。

一例として、Googleのスマートスピーカー「Google Nest Mini」の事例を見てみましょう。

2019年8月6日:トンガ王国で「Google Nest Mini」の商標登録出願

2019年10月16日:発表イベント「Made by Google」でNest Mini発表

2019年12月3日:優先権を主張し、日本で「Google Nest Mini」の商標登録出願(商願2019-151618

まずGoogleは2019年8月6日にトンガ大国で「Google Nest Mini」を出願していますが、トンガ王国では出願公開されないため、Nest Miniとの名称が公開されることはありません。

その後、2019年10月16日の発表イベント「Made by Google」で初めてNest Mini発表し、その発表後の2019年12月3日にトンガ王国での出願に基づく優先権を主張して日本に「Google Nest Mini」を出願しています。

日本での実際の出願日は発表イベントの後の12月3日になりますが、この出願には優先権が働くため、日本においても8月6日に出願されていたのと同様ように扱われます。

これにより、発表イベントよりも前の早い時点での出願日の利益を確保しながら、発表イベント前に名称がネタバレしてしまうことを防ぐことができます。

なお、日本での出願後にトンガ王国での出願を放棄しても日本での優先権の効果は維持されます(パリ条約A(3))。

そのため、トンガ王国での商標権が不要な場合には、日本での出願後にトンガ王国での出願を放棄すればよく、これによってトンガ王国での登録費用を節約できます。

このような手法は、新商品の発表前に新商品の動向を知られたくないが、その名称の商標を押さえておきたい場合に有効なものであり、もちろんGoogleなどの大企業でなくても使用可能です。一度ご検討されてみてはいかがでしょうか。

 

今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。

弁理士 中村幸雄


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