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制約こそアイデアを生み出す原動力

止まらない新型コロナウイルスの感染拡大を受け、都内では出勤自粛、小売り・娯楽施設の営業自粛、飲食店の営業自粛、各種イベントの自粛、外出の自粛など、各分野への制約が増えてきました。

新型コロナウイルス自体まだ分からないことが多く、効果的な治療薬やワクチンの登場がまだ先である以上、受け入れざるを得ない状況ですが、行動を制約されるというのはつらいものですね。

反面、制約も悪いことばかりではありません。制約によって思考のスコープを絞ったり、情報を間引いたりできるので、自由に膨大な情報を組み合わせることができる場合に比べ、創造的な関連性を見つけ易くなるという利点もあります。

あまりにも多くの選択肢がある場合、それらを比較検討して選択すること自体困難になり(選択肢過多:Choice Overload)、人が選択可能な選択肢の個数は5~6が限度ともいわれています。

制約は強制的に選択肢を減らすものですが、選択肢が減っていくと発想にフックが掛かり易いというか、一体なにが問題なのか、何を解決すればよいのか、どうすればよいのかが次第に明確になっていきます。

すなわち、あまりにも創造的な組み合わせが多い場合、それらを網羅的に組み合わせて新しいアイデアを生み出すことは困難です。

例えば「地球にやさしいエネルギー」とは何だろうと漠然と考えていても良いアイデアにたどり着くことはありません。

一方、制約を増やしていくことで新しいアイデアが生まれ易くなります。

例えば「地球にやさしいエネルギー」を「太陽電池」に制約し、さらに「小型化」→「薄さ〇〇以下」、「軽量化」→「重さ〇〇以下」、「発電効率向上」→「〇〇%以上」、「低コスト」→「〇〇円以下」と制約条件を増やしていくと、それを達成するためのさらなる制約が明確になってきます。

「小型化」「軽量化」を進めると「発電効率」が低下するとか「コスト」が高くなるといったような制約です。

このように制約を増やしていくと、それらの制約をクリアーするための手段にフォーカスし易くなり、新しいアイデアを生み出すための思考のフックが効き易くなります。

特許出願を行う際に提出する書類(明細書)には、「背景技術」「発明が解決しようとする課題」「課題を解決するための手段」という記載欄があります。

「発明が解決しようとする課題」はまさに「制約」である課題を記載する欄であり、この「課題を解決するための手段」が「発明」に相当します。

このように、アイデアはネガティブな制約と表裏一体であり、制約の積み重ねから生まれるといっても過言ではありません。

新型コロナウイルスによる世界の変化は予想以上で、これまでの多くの自由が奪われています。

しかし、そのような制約下であるからこそ、制約をありのまま受け入れ、さらにはあえて制約を増やしていくことで、それまで誰もなしえなかった新しいアイデアを生み出すことができるかもしれません。

この状況をチャンスととらえ、新しい世界を探してみるのもよいのではないでしょうか。

今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。

弁理士 中村幸雄


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