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ジェネリック家具と知的財産権

意匠権の切れたデザインをそのまま用いて製造された家具を「ジェネリック家具」といいます。ちょうど、特許権が切れた医薬品と同じ有効成分・効能の薬をジェネリック医薬品とよぶのに似ていますね。

多くは有名デザイナーによるデザイナーズ家具の複製品がジェネリック家具として販売されているようです。

現存デザインをそのまま採用することでデザイン期間や費用を削減でき、低価格かつ短納期でお洒落な家具を顧客に届けることができます。

いわゆる模倣品な訳ですが、関連する日本国内の意匠権が全て消滅しているのであれば、そのジェネリック家具の製造・販売が日本国内の意匠権を侵害することはありません。

そのようなことで人気なジェネリック家具ですが、日本で意匠権が消滅しているからといって知的財産権上の問題が完全にクリアーであるとは限りません。

今回のテーマはジェネリック家具と知的財産権です。

1.属地主義

意匠権は登録によって発生し、意匠法で定められた期間だけ存続させることが可能です。

原則、意匠法は国ごとに制定され、意匠権の効力はそれを定めた各国内にのみに及びます(属地主義)。

そのため、日本国で意匠権が消滅していたとしても、他の国では意匠権が存続している場合もあります。

たとえば、日本の意匠権は登録の日から最大20年間存続(2020年4月1日以降に出願された場合には出願から最大25年間存続)しますが、フランスでは出願日から最大25年間存続します。

属地主義のもとでは外国の意匠権の効力が日本国内での製造・販売に及ぶことはないのですが、ジェネリック家具を海外に輸出する場合には輸出先の意匠権に注意する必要があります。

ジェネリック家具はECサイトで販売されることも多いのですが、販売先を日本国内に限定しないのであれば、輸出先の意匠権についても確認しておいたほうがいいですね。

2.著作権

著作権も属地主義をとります。ほとんどの国の著作権法は、登録なく著作権が発生する無方式主義を採用しています。

一方、著作物は国を跨いで取引されることも多いので、著作権の効力が自国にしか及ばないのでは保護が十分とはいえません。そのため、著作物の国際的保護のための「ベルヌ条約」などといった条約が存在し、これによって著作権の保護は国境を越えることになります(内国民待遇の原則)。

とはいっても「ベルヌ条約」では属地主義が貫かれています。つまり、著作物は条約加盟国で保護はされるのですが、どのように保護するのかを決めるのは各国の著作権法に基づきます。すなわち、著作物は各加盟国の著作権法で独立に保護されます。

そのため、家具を著作権によって保護する国では家具に著作権の効力が及びますが、そうでない国には効力は及びません。

著作権の存続期間は意匠権の存続期間よりも長く、また著作者の意を害する方法で改変などを行う行為を半永久的に禁じている国もあります。

そのため、著作権の効力が及ぶとなると、ジェネリック家具といえども著作権侵害の問題が生じることになります。

ただ日本では、意匠制度と著作権制度との競合を避けるという前提のもと、純粋美術と同視できる程度のもっぱら鑑賞を目的とした美術工芸品に限って「美術の著作物」として著作権法で保護され、通常の家具のような応用美術品に著作権の効力は及ばないとされることが伝統的な考え方です。

日本以外の国でも同じような考え方を取る国が多いのですがフランスなどでは比較的広く実用品を著作物として認めています。

さらに近年日本でも、幼児用の椅子に著作物性を認める高裁判決(幼児用椅子事件:知財高裁平成27年4月14日判決)が出されています。

知財高裁平成27年4月14日判決から引用

そのため、ジェネリック家具といえども、日本国内での製造販売や海外への輸出販売において著作権侵害の問題が発生する可能性もゼロとはいえません。

3.商標権

日本国内の商標権は登録によって発生し、更新を行うことにより半永久的に存続します。

ジェネリック家具に商標登録されロゴが彫刻されている場合、そのロゴごと複製することが商標権侵害に該当する場合もあります。

また家具そのものが立体商標として登録された事例は少ないのですが、それでも長年販売されてきた結果、デザイナーズ家具のデザインそのものが商標としての機能を持つに至ったとして商標登録が認められた事例も存在します(Yチェア立体商標事件:知財高裁平成23年6月29日)。

知財高裁平成23年6月29日判決から引用

デザイナーズ家具が立体商標として商標登録されていると、そのデザインを模した「ジェネリック家具」の販売行為等が商標権侵害となってしまいます。

4.不正競争防止法

不正競争防止法では、以下の行為が「不正競争」として禁止されています。これらの保護のために登録は不要です。

①他人の商品等表示であって周知なものと同一または類似するものを使用や譲渡等し、他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為。

②他人の商品の形態を模倣した商品を譲渡等する行為。ただし、日本国内において最初に販売された日から起算して三年まで。

①はオリジナル家具のデザインが商品等表示(例えばブランドを表示するもの)といえるほどの顕著性を持ち、かつ、周知である場合に注意すべき事項です。

②は、オリジナル家具が日本国内で最初に販売されてから3年以内の場合に注意すべき事項です。

まとめ

以上のように日本国内で意匠権が消滅していても、何らかの知的財産権の問題が発生する可能性は考えられます。

どんなこともゼロリスクということはないのですが、ジェネリック家具のオリジナルが著名だったり、輸出も考えられている場合には慎重に検討されてみてもいいかもしれませんね。


今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。
弁理士 中村幸雄


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