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ブライダルシーンでの音楽利用と著作権(2)

ブライダルシーンでの音楽利用と著作権の2回目。今回のテーマは音楽利用に関する権利の消滅や制限です。

音楽を正当利用するためにはその利用許諾を受ける必要がありますが、関連する権利が消滅していたり制限されていたりする場合には、この許諾が不要となる場合もあります。

 

1.音楽の「複製」利用に関する権利の消滅・制限

A.保護期間

音楽の複製利用に関係する権利の保護期間は以下の通り。保護期間が満了した音楽の複製には許諾は不要です。

・著作者の複製権:70年(著作権法51~58条)

・著作者の翻案権:70年(同法51~58条)

・実演家の録音権:70年(同法101条)

・レコード製作者の複製権:70年(同法101条)


B.半永久的に禁止される行為

以下の権利は著作者や実演家の死亡によって消滅しますが、これらの権利を侵害するような行為を著作者や実演家の意を害するように行うことは、著作者や実演家の死後であっても禁じられています。

・著作者の同一性保持権・氏名表示権:同法59条,60条

・実演家の同一性保持権・氏名表示権:同法101条の2,101条の3

例えば、著作者や実演家の死後であっても、著作者や実演家の意を害するような替歌や演奏の改変等を行うことは禁じられています。


C.制限される権利

以下の権利は「私的使用目的の複製」および「付随対象著作物の複製」には及びません。

・著作者の複製権

・実演家の録音権

・レコード製作者の複製権

 

I)私的使用目的の複製(同法30条、102条)

以下をすべて満たす場合には「私的使用目的の複製」として上記権利が制限され、許諾を受けることなく複製を行うことができます。

(1)個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用することを目的とすること

(2)使用する本人が複製すること

(3)公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器を用いて複製しないこと

(4)コピープロテクションを回避したと知りながら行った複製でないこと

(5)違法アップロードされたことを知りながらダウンロードしたものでないこと

例えば、披露宴の様子を家族の記念のために自らビデオ撮影するような行為は私的使用目的の複製に該当し、権利者からの許諾は不要です。

一方、披露宴の参加者へ配布する目的で披露宴の様子を撮影したビデオにBGMを入れるような行為は「私的使用目的の複製」には該当せず、許諾が必要となります。

 

II)付随対象著作物の複製(同法30条の2、102条)

対象の音楽が以下をすべて満たす場合には「付随対象著作物の複製」として上記権利が制限され、許諾を受けることなく複製を行うことができます。

(1)本来の録音または録画の対象から分離することが困難であるため付随して対象となる音楽

(2)録音または録画されたコンテンツにおける軽微な構成部分であること

(3)著作権者の利益を不当に害するものでないこと

入退場やケーキ入刀などの主要場面において会場でBGMとして流される音楽はそのシーンにとって重要な要素であり「軽微な構成部分」とはいえません。

そのため、このようなシーンを録音・録画した場合に収録されるBGMは「付随対象著作物の複製」とはいえないでしょう。

一方、披露宴の出席者の様子を撮影しているときに、そのシーンとは無関係に背景で流れている音楽が付随的に録音されるような場合には「付随対象著作物の複製」として認められる可能性はあります。



2.音楽の「演奏」利用に関する権利の消滅・制限

A.保護期間

音楽の演奏利用に関係する権利の保護期間は70年(著作権法51~58条)。保護期間が満了した音楽の演奏(歌唱や再生を含む)には許諾は不要です。


B.半永久的に禁止される行為

以下の権利は著作者や実演家の死亡によって消滅しますが、これらの権利を侵害するような行為を著作者や実演家の意を害するように行うことは、著作者や実演家の死後であっても禁じられています。

・著作者の同一性保持権・氏名表示権:同法59条,60条

・実演家の同一性保持権・氏名表示権:同法101条の2,101条の3


C.制限される権利

非営利・無体化・無報酬の演奏には演奏権は及びません。つまり、このような演奏には許諾は不要です。

・演奏権:非営利・無体化・無報酬の演奏(同法第38条)

非営利・無体化・無報酬とは、

①営利を目的とせず

②聴衆又は観衆から料金(いずれの名義をもってするかを問わず、著作物の提供又は提示につき受ける対価)を受けず

③実演家に報酬が支払れない場合

をいいます。

披露宴での演奏は、ブライダル運営会社が営利目的で行っているため、非営利・無体化・無報酬の演奏とはいえないでしょう。

そのため、披露宴やホテルのパーティでの演奏(歌唱や再生を含む)には許諾が必要です。

 

次回はブライダルシーンで音楽使用の許諾を受けるための仕組みについて話します。


今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。

弁理士 中村幸雄


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