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守りの特許と攻めの特許-事業に対する事業に対する貢献度を考慮した特許戦略

特許といえば他者にアイデアを模倣されないためのツール、いわば「守り」ための権利と思われるかもしれません。

しかし企業が実施している事業との関係でみた場合には、特許が他社を弱体化させるための「攻め」のツールとして機能する場合もあります。

今回のテーマは「守りの特許」と「攻めの特許」です。


「守りの特許」は城壁

「守りの特許」とは、自社の製品やサービスを同業他社から差別化するコア技術(強み)を保護する特許、比喩するなら「自社のコア技術を守る城壁」として機能する特許です。

すなわち、他社によるコア技術の模倣を禁じ、過当競争を避け、投資に見合う利益を確保するためのツールが「守りの特許」です。

「守りの特許」が自社のコア技術をカバーしていなければならないのは当然ですが、それだけでは十分ではなく、それと同等の市場価値のある代替技術にも効力が及ばなければ十分とはいえません。


「攻めの特許」は城壁を攻撃する砲弾

一方「攻めの特許」とは、他社のコア技術を保護している他社の特許を弱体化させる特許、比喩するなら「他社の城壁を攻撃する砲弾」として機能する特許です。

具体的には、他社の「守りの特許」を自社で独自に改良して生まれた改良発明の特許が「攻めの特許」となります。

例えば、自社Bが他社Aの「守りの特許α」の改良発明の「攻めの特許β」を取得した場合、他社Aは「攻めの特許β」を実施できなくなります。

つまり、他社Aは自らの「守りの特許α」の範囲内であっても「攻めの特許β」の効力が及ぶ範囲では自らの「守りの特許α」を実施できなくなってしまいます。「守りの特許α」の範囲内であっても「攻めの特許β」の効力が及ぶからです。

そのため、自社Bが「攻めの特許β1」「攻めの特許β2」・・・と取得していくことで、他社Aが実施できる「守りの特許α」の範囲をどんどん制約していくことが可能です。

すなわち、他者Aのコア技術の改良発明について自社Bが「守りの特許」を取得していくことで、他社Aの競争力を弱めることができます。

また、他社Aがそのコア技術を実施するために他社Aの「守りの特許」を自社Bの「攻めの特許」とのクロスライセンスした場合には、自社Bも他社Aのコア技術を利用できるようになり、他者Aの競争力を弱めることができます。

このように「攻めの特許」によって他社の「守りの特許」を弱体化させ、他社の競争力を弱めるといった戦略もあります。


特許の事業適合性とは

このような「守りの特許」「攻めの特許」が事業内容にどれだけふさわしいかを表す指標を「特許の事業適合性」といい、次のような場合に「特許の事業適合性」が高いといえます。

①コア技術を囲む広い城壁
自社の差別化ポイントおよびその代替技術を広くカバーする「守りの特許」を保有している。

②城壁を強化する改良発明
自社の「守りの特許」の改良発明の特許出願を継続的に行っている。これにより、自社の「守りの特許」を弱体化させる「攻めの特許」を他社に取られないようにできるからです。

③決して落城しない
自社の「守りの特許」を他社にライセンスしない。自社の「守りの特許」の他社へのライセンスは、自社の強みを明け渡してしまうことになるからです。

④他社の「守りの特許」を攻撃するための豊富な砲弾
他社の「守りの特許」を攻撃するための「攻めの特許」を数多く保有している。他社の強みを弱体化させ、戦いを優位に運ぶことができます。

⑤自社では重要ではないが、他社に重要な「攻めの特許」
「攻めの特許」が自社のコア技術ではなく、他社のコア技術をカバーしている。これにより、自社の「攻めの特許」で他社の「守りの特許」とクロスライセンスを結び、自社の強みを弱体化させることなく、他者の強みを排除することができます。

 

事業に対する貢献度を考慮した特許戦略

以上のように、特許の事業に対する貢献度は、「守りの特許」に対する貢献度と「攻めの特許」に対する貢献度の両方を考慮する必要があります。ポイントをまとめると以下のようになります。

・事業の中で自社が得意な差別化ポイントを明確にし、そこに「守りの特許」を集中させること。

・「守りの特許」は同業他社にライセンスしないこと。

・「守りの特許」の改良発明の特許取得を継続的に行うこと。

・同業他社が得意な強みを明確にし、その強みを無力化させる「攻めの特許」も取得すること。

以上、今回も最後までお読みいただきありがとうございました。


弁理士 中村幸雄


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