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欧州特許庁がAIを発明者とする特許出願を拒絶

欧州特許庁がAIを発明者とする2件の特許出願(EP18275163, EP18275174)を拒絶したとの報道がありました。欧州特許庁で特許が付与されると、その特許権の扱いは欧州の各指定国に委ねられることになります。指定国もAIが権利者では困ってしまいますから、妥当な判断だったのではないでしょうか。

https://japan.zdnet.com/article/35147613/

日本の場合はどうかというと・・・発明を行った時点で特許を受ける権利が発生しますが、その大前提として発明者が「権利能力」を持っている必要があります。権利能力とは権利義務の帰属主体となることができる資格を意味し、権利能力者は自然人及び法人です。そのため、日本の場合も自然人でも法人でもないAIには権利能力はなく、AIを発明者とした特許を受ける権利は発生しないことになります。

AIに権利義務が発生してしまっては困るので当然といえば当然で、現在の特許法が「時代遅れ」とまでは言えないでしょう。ただ、純粋な技術としてみるとAIを発明者とみてもよい場合も存在するのも事実。

現在、AIと呼ばれているものの大部分が、①入力とパラメータとから出力が決まるアルゴリズムであって、②人間がすべてのパラメータを定めてあげなくても、学習によって自動的にパラメータが決定されるものです。

このAIのタイプには、ディープラーニングなどの教師有り学習を用いるものや、GANや強化学習などの教師なし学習を用いるものなどがあります。

発明を行うAIという観点では、教師なし学習タイプ、特に強化学習を行うタイプが発明者と言えそうです。

強化学習とは、各状態でどのような行動をとれば報酬が最も大きくなるかを学習させるものであり、人間は報酬、すなわち好ましい状態を決めてあげるだけで、AIがその状態になるための最適な手段を自分で探索して出力してくれます。

発明とは、従来存在していた課題の新たな解決手段。AIに発明させるためには、まず人間が解決すべき課題をAIに与える必要があります。課題を与えられたAIは強化学習によって、その課題を解決するための手段、すなわち発明を行うことになります。

公知文献や特許の検索も自動で行うことが可能になれば、人間が課題を与えるだけでAIが大量の発明を自ら行うという時代も来るのかもしれません。

そうなると、課題、すなわち何をしたいのか「What」を決めるのが人間の役割で、その解決手段「How」を探すのがAIの役割というすみ分けになってきます。そして、AIが権利主体となれない以上、その恩恵は「What」を決めた人間が受け取るという構図になりそうです。

「What」を決められるのは人間だけ。何かをしたいという衝動を伴うモチベーションは人間にしか持てないもの。ワクワク感は富を生み出す源泉。モチベーションを大切にしていきましょう!

以上、最後までお読みいただき、ありがとうございました。

弁理士 中村幸雄


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